第30話 退職後のお金をどう管理するか

60歳で早期退職を決めた時、私が大きく意識したことがあります。

それは、

「これからのお金を、どのように管理していくか。」

ということでした。

会社員として働いていた頃は、毎月決まった日に給与が入り、税金や社会保険料も会社が手続きをしてくれていました。

給与明細を見ることはあっても、将来のお金の流れを細かく考える機会は、それほど多くありませんでした。

しかし、退職すると状況は大きく変わります。

収入は会社員時代と比べ、大きく変わります。

一方で、生活費や税金、保険料などの支出は続きます。

「これから先、どのようにお金を使っていけば安心して暮らせるのだろう。」

そんなことを考えるようになりました。

私はまず、現在のお金の流れを整理することから始めました。

毎月の生活費はいくら必要なのか。

再就職後の収入でどこまでまかなえるのか。

年金を受け取るまでの期間をどう過ごすのか。

一つひとつ確認しました。

私には家族がいます。

妻と二人の子どもがいます。

子どもたちは、高校生と専門学生です。

これから数年間は、住宅ローンの返済に加え、子どもたちの教育費も重なり、人生の中でも一、二を争うほど大きな出費が続きます。

だからこそ、「何となく大丈夫だろう」ではなく、数字で確認することを大切にしました。

退職金と企業型DC(確定拠出年金)の一時金で住宅ローンを完済できるのか。

子どもたちが卒業するまでの学費は確保できるのか。

そして、食費や光熱費、税金、ガソリン代などの日々の生活費は、再就職後の給与で賄えるのか。

一つずつ計算した結果、この数年間を乗り越えれば、その後の家計は大きく改善し、将来への見通しを持てると考えることができました。

もちろん、この決断は私一人で決めたものではありません。

再就職後は妻のほうが収入も多くなるため、家族で話し合い、納得した上で退職を決断しました。

その計画を実行するために、第29話でお話ししたように、企業型DCは一括で受け取り、その一部を住宅ローンの完済に充てました。

住宅ローンという毎月の大きな支出をなくしたことで、これからの生活に対する安心感は大きく変わりました。

しかし、退職後のお金で大切なのは、ただ資産を減らさないことだけではありません。

必要な時に必要なお金を使いながら、将来への備えも残していくことだと思います。

再就職後の収入は、会社員時代と比べると大きく減りました。

それでも、働くことで得られる収入は、生活面だけではなく、精神的な安心にもつながっています。

「まだ社会とつながっている。」

「自分の力で収入を得ている。」

その感覚は、60歳から新しい仕事を始めた私にとって大きな意味がありました。

退職すると、お金に対する不安は誰にでもあると思います。

しかし、何も分からないまま不安になるのではなく、自分の状況を整理し、必要な準備をしておくことで、安心につながっていきます。

税金。

健康保険。

社会保険。

年金。

退職金。

企業型DC。

これまで会社に任せていたことを、自分自身で理解する。

その経験を通して、私は改めて感じました。

「お金の安心は、金額だけで決まるものではない。」

そう実感できたことも、退職して得られた大きな学びの一つでした。

大切なのは、自分の状況を知り、家族と話し合い、これからの人生をどう歩むのかを考えることなのだと思います。

【次回予告】

第31話 年金について、まず知ることから始めた

退職を決意した頃、私が早いうちから調べ始めたことがあります。

それは、「年金」です。

会社員として働いていた頃は、給与から年金保険料が天引きされることが当たり前で、制度について深く考えることはありませんでした。

しかし、退職後の生活を考える中で、年金は将来を支える大切な収入になることを改めて実感しました。

年金はいつから受け取れるのか。

どのような仕組みになっているのか。

退職前から制度について学び、自分なりに受け取り方を考え始めました。

第31話では、私が退職前から年金制度について学び始めた理由と、その中で感じたことをお話しします。

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