リスタート物語では、私自身の退職や再就職の経験を中心に書いていますが、この「制度」の記事では、そこで登場した退職所得控除について、もう一歩踏み込んで、仕組みや計算方法、退職金を受け取る際の税金について分かりやすく整理していきます。
「退職金には、どのくらい税金がかかるのだろう?」と気になっている方の参考になれば幸いです。
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退職金には、そのまま税金がかかるわけではありません
会社を退職するとき、多くの方が気になるものの一つが「退職金」ではないでしょうか。
私も長年勤めた会社を退職することになり、実際に退職金を受け取る段階になって、初めて税金について詳しく調べました。
そこで知ったのが、
「退職所得控除」
という制度です。
名前だけを見ると少し難しく感じますが、簡単にいえば、
長年働いてきた人の退職金に、できるだけ大きな税負担がかからないように設けられている控除制度
と考えると分かりやすいと思います。
退職金の金額すべてに税金がかかるわけではありません。
むしろ、長く勤めた人ほど大きな控除を受けられる仕組みになっています。
今回は、私自身が退職して初めて知った「退職所得控除」について、できるだけ分かりやすく整理してみます。
退職所得控除とは?
退職金は、毎月の給与や賞与とは税金の計算方法が異なります。
長年の勤務に対する対価として一度に支払われる性格があるため、税負担が大きくなりすぎないよう、税制上の配慮がされています。
その一つが「退職所得控除」です。
退職金から一定額を差し引き、その残額をもとに税金を計算します。
つまり、
退職金 - 退職所得控除額
が最初のポイントになります。
退職所得控除はいくらになる?
退職所得控除額は、基本的に「勤続年数」によって決まります。
勤続20年以下の場合
40万円 × 勤続年数
※計算結果が80万円未満の場合は80万円
勤続20年を超える場合
800万円 + 70万円 ×(勤続年数-20年)
となります。
ここで注目したいのは、
20年を超えてからは、1年につき70万円ずつ控除額が増えていく
ということです。
たとえば勤続30年なら、
800万円+70万円×10年
= 1,500万円
が退職所得控除額になります。
勤続33年なら、退職所得控除はいくら?
ここで一つの例として、勤続33年の場合を計算してみます。
20年を超えていますので、
800万円+70万円×(33年-20年)
となります。
計算すると、
800万円+70万円×13年
=800万円+910万円
= 1,710万円
です。
つまり、勤続33年なら、原則として1,710万円という大きな退職所得控除があります。
長く勤めてきた人にとって、この制度がいかに大きいかが分かります。
控除を超えた部分すべてに税金がかかるわけではない
さらに重要なのがここです。
一般的な退職金の場合、退職所得控除を超えた金額が、そのまますべて課税対象になるわけではありません。
原則として、
(退職金-退職所得控除額)×1/2
で「退職所得」を計算します。
たとえば、
退職金 2,000万円
退職所得控除 1,710万円
だった場合、
2,000万円-1,710万円=290万円
さらに、
290万円×1/2=145万円
となります。
この145万円が「課税退職所得金額」となり、この金額をもとに所得税などが計算されます。
※勤続5年以下の短期退職手当等や特定役員退職手当等では、2分の1課税が一部または全部適用されない場合があります。
なぜ退職金の税金は優遇されているの?
退職金は、毎月の給与とは少し性格が違います。
何十年も働いた結果として、まとまった金額を一度に受け取ることがあります。
それを普通の給与と同じようにその年の所得として課税してしまうと、税負担が非常に大きくなってしまいます。
そのため、
・勤続年数に応じた大きな退職所得控除
・原則として控除後の金額をさらに2分の1にする
・給与などの他の所得とは分けて税額を計算する「分離課税」
という仕組みが設けられています。
退職後の生活資金という意味でも、退職金には税制上の配慮がされているわけです。
勤続年数は「1年未満」を切り上げる
もう一つ覚えておきたいポイントがあります。
退職所得控除を計算するときの勤続年数は、1年未満の端数がある場合、原則として1年に切り上げます。
たとえば、
30年1か月
勤務した場合でも、
勤続31年
として退職所得控除を計算します。
数か月だから切り捨てられる、というわけではありません。
退職時期を考えるときには知っておきたいポイントです。
「退職所得の受給に関する申告書」も大切
退職金を受け取る際には、
「退職所得の受給に関する申告書」
という書類も重要になります。
通常は退職金を支払う会社などに提出します。
この申告書を提出していれば、勤務先が勤続年数や退職所得控除額などをもとに税額を計算し、原則として退職金から適切な税額を源泉徴収します。
退職時には会社から渡される書類を何となく記入するのではなく、
「これは何のための書類なのか」
を確認しておくことも大切だと思います。
なお、この申告書を提出していない場合は、退職金等の支払額に対して20.42%の所得税・復興特別所得税が源泉徴収され、原則として確定申告で精算することになります。
企業型DCなどを一時金で受け取る人は要注意
ここは特に注意したいところです。
退職所得控除は、単純に
「会社の退職金に1回、企業型DCにももう1回、同じ控除を満額使える」
とは限りません。
企業型確定拠出年金(企業型DC)やiDeCoの老齢給付金を一時金として受け取った場合、その一時金も退職所得として扱われることがあります。
そのため、
会社から受け取る退職金と、企業型DCなどの一時金を「いつ」「どの順番で」受け取るのか
によって、退職所得控除の計算に影響する場合があります。
特に2026年1月1日以後に受け取るものについては、過去に受け取った退職手当等との重複期間を調整するルールが改正されています。
ここは金額が大きくなる可能性があるため、
「退職金はいくらもらえるか」
だけではなく、
「どの制度から、いつ一時金を受け取るのか」
まで確認しておくことが大切です。
退職金・企業型DCは受け取り方で税金が変わる
ここでもう一つ知っておきたいのが、退職金や企業型DCの受け取り方による税金の違いです。
企業型DCなどは、一時金としてまとめて受け取る方法だけでなく、制度によっては年金形式で受け取る方法もあります。
そして、一時金で受け取るか、年金形式で受け取るかによって、所得の種類や適用される控除、税金の計算方法が異なります。

上の図のように、受け取り方によって税金の仕組みが大きく異なります。では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
退職金と企業型DCは「受け取る時期」にも注意
会社の退職金と企業型DCをどちらも一時金で受け取る場合は、受け取る順番と時期にも注意が必要です。
一定期間内に複数の退職金やDC一時金を受け取った場合、同じ勤続期間・加入期間について退職所得控除を重複して使わないよう、控除額が調整される場合があります。
特に2026年以降は、受け取る順番によって過去の退職金等を確認する期間が異なるため、受取時期を決める前に確認しておくことが大切です。

なお、単純に「10年・20年たてば必ず税金が安くなる」という意味ではありません。実際の計算では、勤続期間やDCの加入期間、過去に受け取った退職金などによって取扱いが異なります。
このように、実際に退職してみると、
退職金はいくらなのか。
勤続年数は何年として計算されるのか。
退職所得控除はいくらなのか。
企業型DCはどう受け取るのか。
税金はいくらかかるのか。
一つひとつがつながっていることに気付きました。
そして感じたのは、
「退職してから調べるのではなく、退職する前に知っておいた方がいい制度だった」
ということです。
まとめ|退職所得控除は退職前に知っておきたい制度
退職所得控除の基本は、それほど難しくありません。
勤続20年以下なら、
40万円×勤続年数
勤続20年を超えたら、
800万円+70万円×(勤続年数-20年)
です。
そして一般的な退職金では、原則として、
(退職金-退職所得控除額)×1/2
によって退職所得を計算します。
長年勤めてきた人ほど、大きな控除を受けられる制度です。
ただし、企業型DCやiDeCoなどの一時金を受け取る場合には、受け取る時期や過去の退職金との関係によって計算が変わることがあります。
私自身、60歳で退職するまで、こうした制度について詳しく考える機会はほとんどありませんでした。
だからこそ、これから退職を考えている方には、
「退職金はいくらもらえるか」だけでなく、「税金を引いたあと、実際にいくら残るのか」まで確認しておくこと
をおすすめしたいと思います。
退職は人生の大きな節目です。
制度を少し知っているだけでも、その後のお金の計画は立てやすくなると思います。
※この記事は制度の一般的な仕組みを紹介したものです。実際の税額や退職所得控除額は、勤続期間、退職金の受取時期、企業型DC・iDeCoなどの一時金の受給歴によって異なる場合があります。最終的な税務上の取扱いは、国税庁・税務署・税理士等にご確認ください。
出典・参考
国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」
※2026年8月10日時点の制度・国税庁公表情報をもとに作成しています。
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