【制度】退職所得控除とは?わかりやすく解説

ブログ「リスタート物語」では、60歳での退職や再就職という私自身のリアルな経験を中心に発信しています。今回の「制度」に関する記事では、退職時に誰もが気になる「退職金にかかる税金」と、それを大幅に軽くしてくれる「退職所得控除」について解説します。

退職所得控除の仕組みや具体的な計算方法、退職金を受け取る際の税負担を減らすポイントを分かりやすく整理しました。「退職金には、どのくらい税金がかかるのだろう?」「自分で計算してみたい」と気になっている方の参考になれば幸いです。

💡 【この記事の結論】

※私の場合は勤続年数33年で退職したため、退職所得控除は**「1,710万円」**適用され、**退職金にかかる所得税・住民税をゼロ(非課税)**に抑えることができました。

勤続年数が20年を超えると控除額が「1年につき70万円」に跳ね上がるため、長年勤めた人ほど非常に手厚い節税制度になります。ご自身の勤続年数にあてはめた計算方法や税負担を減らすポイントを本文で分かりやすく解説します!

退職金には、そのまま税金がかかるわけではありません

会社を退職するとき、多くの方が最も気になるものの一つが「退職金」ではないでしょうか。私自身も、長年勤めた会社を退職することになり、実際に退職金を受け取る段階になって初めて税金について真剣に詳しく調べました。その時になってようやく存在を知ったのが「退職所得控除」という非常にありがたい制度です。

名前だけを見ると少し難しく感じてしまいますが、簡単にいえば、「長年働いてきた人の退職金に、できるだけ大きな税負担がかからないように設けられている国のご褒美のような控除制度」と考えると分かりやすいと思います。

退職金の金額すべてにそのまま税金がかかるわけではありません。むしろ、同じ会社に長く勤めた人ほど、より大きな控除を受けられる手厚い仕組みになっています。今回は、私自身が退職して初めて知った退職所得控除の仕組みについて、これからの退職を控えている同世代の方に向けて、できるだけ噛み砕いて分かりやすく整理してみたいと思います。この記事を読めば、ご自身の退職金からいくら控除されるのかがハッキリと分かるようになります。


退職所得控除とは?

退職金は、毎月の給与や賞与とは税金の計算方法が大きく異なります。これは、長年の勤務に対する労いや対価として一度に支払われるという特別な性格があるため、一度に大きな税負担がかかりすぎないよう、税制上の手厚い配慮がされているからです。

その配慮の柱となっているのが「退職所得控除」です。退職金を受け取る際は、まず支給された総額からこの一定の控除額を差し引き、その残った金額をもとに税金を計算していく仕組みになっています。

つまり、税金を計算する上での最初のステップは、「退職金総額 - 退職所得控除額」という引き算を行うことになります。この控除額がいくらになるかによって、最終的に支払う税金がゼロになるかどうかが決まるため、非常に重要なポイントです。



退職所得控除はいくらになる?

退職所得控除の具体的な金額は、一律ではなく「あなたが会社に勤めていた勤続年数」によって決定されます。

勤続年数の数え方は、1年未満の端数がある場合は切り上げて1年として計算します。具体的な計算方法は、以下のように勤続年数が「20年以下」か「20年超」かで2つの数式に分かれています。

【早見表】勤続年数に応じた退職所得控除額の計算方法

勤続年数退職所得控除額の計算式備考・最低保証
20年以下40万円 × 勤続年数計算結果が80万円に満たない場合は、一律で80万円
20年超800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)20年を超えた分の期間は、1年あたりの控除額が増額されます

ここで特に大注目したいのが、「勤続年数が20年を超えてからは、1年につき控除額が70万円ずつ一気に増えていく」という大変手厚い優遇措置になっている点です。長く勤めた人ほど、税制面で非常に有利になる仕組みになっています。

実際に、私のケースに近い「勤続30年」の場合を例にして計算してみましょう。

  • 20年までの控除額:40万円 × 20年 = 800万円
  • 20年を超えた10年分の増額:70万円 × 10年 = 700万円
  • 合計の控除額:800万円 + 700万円 = 1,500万円

したがって、勤続30年の方であれば、退職金の総額が1,500万円までなら税金が一切かからない(ゼロになる)ということになります。


勤続33年なら、退職所得控除はいくら?

ここでもう一つの具体的な例として、私自身の勤続年数にも近い「勤続33年」の場合で実際に計算してみましょう。

勤続年数が20年を超えていますので、先ほどの「20年超の計算式」に当てはめます。

  • 計算式:800万円 + 70万円 ×(33年 - 20年)

これを順番に計算していくと、「800万円 + 70万円 × 13年」となり、20年を超えた13年分の増額分が「910万円」になります。これにベースの800万円を足すことで、最終的な退職所得控除額は「1,710万円」となります。

つまり、同じ会社で33年間実直に勤め上げてきた人の場合、退職金のうち実に「1,710万円」という非常に大きな金額まで、税金がかからない枠(控除)が認められるということです。長年会社を支え、働いてきたシニア世代にとって、この国の優遇制度がいかに手厚く、そして有難いものであるかがよく分かります。


控除を超えた部分すべてに税金がかかるわけではない

退職所得控除のさらに上を行く、重要な優遇措置がここから始まります。一般的な退職金の場合、たとえ退職所得控除の金額を超えてしまったとしても、その超えた金額のすべてにそのまま税金が課せられるわけではありません。

原則として、「(退職金 - 退職所得控除額)× 1/2」という計算を行い、残った金額をさらに「半分(2分の1)」にしたものを、最終的な「退職所得(課税対象)」として計算するルールになっています。

たとえば、退職金が「2,000万円」で、先ほど計算した勤続33年の退職所得控除額が「1,710万円」だった場合を例に考えてみましょう。

控除を引き算した残額:2,000万円 - 1,710万円 = 290万円

2分の1をかける:290万円 × 1/2 = 145万円

このように、最終的に税金が計算されるベースとなる金額(課税退職所得金額)は「145万円」にまでギュッと縮小されます。この145万円をもとにして所得税や住民税などが計算されるため、会社員の退職金は非常に手厚く守られていることが分かります。

⚠️ 知っておきたい例外と最新の法改正ルール

※役員としての勤続年数が5年以下の人(特定役員退職手当等)や、一般の社員であっても勤続5年以下で退職金を受け取る人(短期退職手当等)については、この「2分の1課税」の優遇措置が一部または全部適用されない場合がありますのでご注意ください。

さらに最新の情報として、2026年1月1日以降の受給分からは、iDeCo(一時金)や企業型確定拠出年金と会社の退職金を両方受け取る場合の重複期間に関するルールが、これまでの「5年」から「10年(前年以前9年以内)」へと延長・厳格化されました。同じ時期に複数の退職金を受け取る予定がある方は、計算の重複ルールが以前より厳しくなっていますので、必ず最新の税制に注意してください。


なぜ退職金の税金は優遇されているの?

退職金というお金は、毎月受け取る給与や賞与とはその「性格」が大きく異なります。何十年もの間、一つの会社で身を粉にして働いてきた結果として、人生の最後にまとまった金額を一度に受け取るものだからです。

もしこれを普通の給与と同じように「その年の臨時の収入」としてそのまま課税してしまうと、日本の累進課税制度(収入が多いほど税率が跳ね上がる仕組み)のせいで、せっかくの退職金の大半が税金で消えてしまうという非常に気の毒な事態になってしまいます。

そのため、国は退職される方への労いと退職後の安心のために、主に以下の3つの強力な優遇措置を設けて、会社員の退職金を徹底的に守ってくれているのです。

  • ① 勤続年数が長くなるほど枠が広がる、非常に大きな「退職所得控除」
  • ② 控除を引いた後の残額を、さらに半分(2分の1)に縮小してくれる神ルール
  • ③ 毎月の給与や他の所得とは完全に切り離し、独自の低い税率で計算する「分離課税」

定年退職を迎えた後の生活資金や第二の人生の軍資金という意味合いが強いからこそ、退職金にはこれほどまでに手厚い税制上の配慮がされているわけです。これを知ると、長年会社員を続けてきて本当に良かったな、と私自身も改めて実感しました。


勤続年数は「1年未満」を切り上げる

退職所得控除を計算する上で、もう一つ絶対に覚えておきたいおトクなポイントがあります。それは、控除額の基準となる勤続年数において、1年未満の「端数」がある場合は、原則として一律で「1年に切り上げる」というルールになっている点です。

たとえば、実際の勤務期間が「30年とちょうど1ヶ月」だった場合を例に考えてみましょう。この「1ヶ月」というわずかな端数であっても、計算上は切り捨てられることなく、しっかり「勤続31年」として退職所得控除を計算してもらえるのです。たった1ヶ月多く在籍していただけで、控除の枠が数十万円も増えることになるため、この差は決して小さくありません。

「数ヶ月の端数だから関係ないや」と諦める必要はまったくありません。定年退職の時期をいつにするか、有給消化を含めて会社と最終調整する際には、ぜひとも知っておきたい極めて重要なポイントです。



「退職所得の受給に関する申告書」の提出を絶対に忘れてはいけない

退職金を受け取る手続きの際、絶対に提出を忘れてはならない極めて重要な書類が、「退職所得の受給に関する申告書」です。通常は、退職金を支給してくれる会社から手渡され、そのまま勤務先へ提出することになります。

この申告書を正しく提出しておくことで、会社側があなたの正確な勤続年数や退職所得控除額をあてはめて正しい税額を計算し、本来支払うべき適切な税金だけを退職金から天引き(源泉徴収)して手続きを完了させてくれます。退職時は様々な書類が飛び交うため、会社から渡された紙に何となくサインしてしまいがちですが、「これは何のための書類なのか」を自分自身でしっかり確認しながら記入することが大切です。

万が一、この申告書を提出し忘れてしまうと、大変なことになります。退職所得控除の優遇措置が一切適用されないまま、退職金の支給額に対して一律「20.42%」という非常に重い所得税・復興特別所得税がいきなり天引きされてしまうのです [2026.2]。その場合は後から自分自身で「確定申告」をして払いすぎた税金を取り戻す(精算する)という、非常に面倒な二度手間が発生してしまいますので、退職時には必ずこの書類が提出されているかチェックしてください。


企業型DCやiDeCoを一時金で受け取る人は「重複の罠」に要注意

ここは、これからの退職を迎える方の中で、最も大きな金額の差が生まれるかもしれない超重要ポイントです。大変ありがたい退職所得控除ですが、実は単純に「会社の退職金で枠を満額使い、企業型DC(確定拠出年金)やiDeCoでももう一度、同じ枠を満額使える」とは限りません。

企業型DCやiDeCoの老齢給付金を「一時金(一括)」として受け取った場合、それらもすべて税法上は「退職所得」として扱われます。そのため、会社から受け取る退職金と、これら投資制度の一時金を「何歳(いつ)のタイミングで」「どの順番で」受け取るかによって、退職所得控除の計算が重複して削られてしまうケースがあるのです。

特に注意しなければならないのが最新の法改正です。2026年1月1日以後に受け取る退職手当等からは、過去に受け取った退職一時金との重複期間を調整(合算審査)するルールが、従来の5年から「10年(前年以前9年以内)」へと一気に厳格化されました [2026.1]。

重複する期間があると、2回目にもらう一時金の控除枠が大きく減らされてしまい、思わぬ大増税を食らう可能性があります。ここは動く金額が非常に大きくなる箇所だからこそ、単に「会社の退職金はいくらもらえるか」だけでなく、「どの制度から、いつの順番で一時金を受け取るのがベストなのか」を退職前に必ず確認しておくことが極めて大切です。


退職金・企業型DCは受け取り方で税金が変わる

ここでもう一つ絶対に知っておきたいのが、退職金や企業型DC(確定拠出年金)の「受け取り方」による税金の違いです。

企業型DCなどは、一時金として一度にまとめて受け取る方法だけでなく、数年〜数十年にわたって分割で受け取る「年金形式」を選択できる制度もあります。そして、どちらの受け取り方を選択するかによって、所得の種類や適用される控除、さらには毎年の税金の計算方法がガラリと異なってきます。


一時金と年金形式の税制の違い

受け取り方所得の種類適用される大きな控除税金計算の特徴
① 一時金(一括)退職所得退職所得控除他の所得と分離して計算(分離課税)。さらに2分の1課税が適用されるため、税負担が最も軽くなりやすい。
② 年金形式(分割)雑所得公的年金等控除毎月の給与や他の年金と合算して計算(総合課税)。毎年一定の税金や社会保険料が発生する。

上の表のように、選択する受け取り方によって税金の仕組みは180度異なります。

一見すると、退職所得控除が使えて2分の1課税になる「一時金」の方が常におトクに思えますが、退職金の額が非常に多い場合や、公的年金の受給額が少ない場合など、一人ひとりのライフプランによっては「年金形式」や「両方の組み合わせ」がベストになるケースもあります。だからこそ、自分の場合はどちらが有利になるのかを退職前にシミュレーションしておくことが大切です。


退職金と企業型DCは「受け取る時期」にも注意

会社の退職金と企業型DC(確定拠出年金)をどちらも一時金で受け取る予定がある場合は、受け取る「順番」だけでなく、その「時期(タイミング)」にも細心の注意が必要です。

一定の期間内に複数の退職金やDC一時金を受け取った場合、同じ勤続期間や加入期間について退職所得控除を二重に満額使ってしまわないよう、2回目の控除額が厳しく調整(減額)される仕組みがあるからです。

特に2026年以降の法改正ルールでは、受け取る順番によって過去の退職手当等を確認する期間が異なるため、最終的な受取時期を確定させる前にしっかりと仕組みを確認しておくことが大切です。

なお、これは単純に「10年や20年が経過すれば誰でも必ず税金が安くなる」という意味ではありません。実際の税金計算では、あなたの個人の勤続期間、DCの加入期間、そして過去に受け取った退職金の額などによって取扱いやおトクな組み合わせが細かく異なります。

実際に私自身が退職を経験してみて痛感したのは、「退職金はいくらなのか」「勤続年数は何年として計算されるのか」「退職所得控除はいくらになり、企業型DCをどう受け取るのか」「最終的な税金はいくらかかるのか」という疑問は、すべてが一つひとつ数珠つなぎに繋がっているということです。

そして最後に心から感じたのは、「これらの制度は退職した後にのんびり調べるものではなく、絶対に退職する前に知っておき、準備しておくべき制度だった」という強い教訓でした。


まとめ|退職所得控除は退職前に知っておきたい最大の優遇制度

退職所得控除の基本となる計算ルールは、実はそれほど複雑ではありません。

  • 勤続20年以下の場合:40万円 × 勤続年数
  • 勤続20年を超えた場合:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)

一般的な会社員の退職金であれば、支給総額からこの控除額を引き算した上で、残った金額をさらに半分(2分の1)にして最終的な「退職所得(課税対象)」を計算します。まさに、同じ会社で長年勤めてきた人ほど、より大きな控除を受けられる大変ありがたい税制上の仕組みです。

ただし、企業型DCやiDeCoなどの一時金(一括)を近い時期に受け取る場合には、受け取る順番や過去の受給歴によって計算ルールが複雑に変わることがあります。

私自身、60歳で定年退職を迎えるまで、こうした税金の制度について詳しく勉強する機会はほとんどありませんでした。だからこそ、これから退職やセカンドライフを考えている同世代の方には、単に「自分の退職金はいくらもらえるのか」という表面上の金額だけでなく、「税金や引かれるものをすべて引いた後、実際に手元にいくら残るのか」という本当の現実まで事前に確認しておくことを強くおすすめしたいと思います。

退職はこれまでの人生の中でも最も大きな節目の一つです。このような国の優遇制度を少しでも事前に知っておくだけでも、退職した後のこれからの生活設計やマネープランは圧倒的に立てやすくなります。この記事が、あなたの安心なリスタートの第一歩になれば幸いです。


※この記事は制度の一般的な仕組みを紹介したものです。実際の正確な税額や退職所得控除額は、個人の勤続期間、退職金の正確な受取時期、企業型DC・iDeCoなどの一時金の受給履歴によって細かく異なる場合があります。最終的な税務上の正確な取扱いにつきましては、必ず国税庁、最寄りの税務署、または税理士等の専門家にご確認ください。



出典・参考

国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」
※この記事は、2026年9月時点の制度・国税庁公表情報をもとに作成しています。

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