リスタート物語では、私自身の退職や再就職の経験を中心に書いていますが、この「制度」の記事では、そこで登場した企業型DC(企業型確定拠出年金)について、もう一歩踏み込んで、仕組み・受け取り方・税金などを分かりやすく整理していきます。
企業型DC、受け取るときに迷うのはここ
企業型DC(企業型確定拠出年金)は、会社員のときには仕組みや受け取り方まで詳しく確認する機会が少ないかもしれません。
ところが、退職が近づくと、
「一括で受け取った方がいい?」
「年金として受け取った方がいい?」
「税金はどのくらい違う?」
「退職金と一緒に受け取っても大丈夫?」
など、具体的な疑問が出てきます。
この記事では、制度の仕組みだけでなく、どんな人にどの受け取り方が向いているのか、注意すべき条件は何かまで整理していきます。
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企業型DC(企業型確定拠出年金)とは?
企業型DC(企業型確定拠出年金)は、会社(事業主)が掛金を拠出し、加入者自身が用意された商品の中から運用商品を選び、老後の資金を準備していく制度です。
厚生労働省によると、確定拠出年金には大きく、
企業型DC(企業型確定拠出年金)
と
iDeCo(個人型確定拠出年金)
があります。
企業型DCは基本的に会社が掛金を拠出するのに対して、iDeCoは基本的に自分で掛金を拠出するという違いがあります。企業型DCでも、規約によっては従業員本人が上乗せして掛金を出す「マッチング拠出」ができます。
簡単に表すと、
会社が掛金を出す
↓
自分のDC口座に積み立てられる
↓
自分で運用商品を選ぶ
↓
運用結果によって資産額が変わる
↓
原則として老後に受け取る
という仕組みです。
「確定拠出」とはどういう意味?
「確定拠出年金」という名前は、少し分かりにくいかもしれません。
ポイントは、
将来もらえる金額が最初から決まっているわけではない
ということです。
「確定」しているのは将来受け取る金額ではなく、基本的には拠出する掛金です。実際の受取額は運用結果によって変わります。
その掛金を加入者自身が運用するため、
掛金+運用益
によって、最終的に受け取れる金額が決まります。
そのため、同じ期間、同じような掛金で加入していても、選んだ運用商品や運用成績によって、最終的な資産額が違ってくる可能性があります。
厚生労働省も、確定拠出年金を「あらかじめ定められた拠出額とその運用益との合計額をもとに将来の給付額が決定する仕組み」と説明しています。
企業型DCでは自分で運用商品を選ぶ
企業型DCの大きな特徴の一つが、
自分で運用商品を選ぶ
ということです。
会社が掛金を出してくれたとしても、その後のお金をどの商品で運用するのかは、基本的に加入者自身が決めます。
たとえば、
・定期預金などの元本確保型商品
・国内外の株式を対象にした投資信託
・国内外の債券を対象にした投資信託
・株式や債券などを組み合わせたバランス型商品
などがあります。
ただし、実際に選択できる商品は、勤務先の企業型DCで用意されている商品によって異なります。
そのため、
「企業型DCに入っているから安心」
というだけではなく、
「自分のお金が何で運用されているのか」
を確認しておくことも大切だと思います。
企業型DCには税制上のメリットがある
企業型DCの大きな特徴が、税制上の優遇です。
主に、
① 掛金を拠出するとき
② 運用しているとき
③ 受け取るとき
の3つの段階に税制上の仕組みがあります。
会社が拠出する事業主掛金は給与として課税されず、加入者がマッチング拠出する掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になります。
また、運用中の運用益についても非課税です。
そして受け取るときは、
一時金 → 退職所得控除
年金 → 公的年金等控除
という税制上の仕組みがあります。
企業型DCは「積み立てるとき・運用するとき・受け取るとき」の3段階で税制上の仕組みがあります。特に受け取り方によって使う控除が変わるため、受け取るときの税金まで確認してから決めることが大切です。
企業型DCはいつから受け取れる?
企業型DCの老齢給付金は、原則として60歳以降に受け取る制度です。ただし、60歳から受け取るためには、原則として通算加入者等期間が10年以上必要です。期間が10年未満の場合は、受給開始可能年齢が61歳以降になる場合があります。
また、実際の受け取り方法や手続きについては、加入している企業型DCの規約や運営管理機関などを確認する必要があります。
退職したからといって、普通の預貯金のようにいつでも自由に引き出せる制度ではない点には注意が必要です。
受け取り方は「一時金」と「年金」がある
企業型DCで特に重要なのが、
「どう受け取るか」
です。
制度の規約などによりますが、一般的には、
一時金としてまとめて受け取る
または、
年金形式で分割して受け取る
といった方法があります。
場合によっては、一時金と年金を組み合わせられることもあります。
そして重要なのは、
受け取り方によって税金の扱いが変わる
ということです。
一時金で受け取る場合
企業型DCの老齢給付金を一時金で受け取る場合、その一時金は税法上、原則として退職所得として扱われます。
そのため、
退職所得控除
を利用できる可能性があります。
一般的な退職所得では、
(収入金額-退職所得控除額)×1/2
によって退職所得を計算します。
これは前回の記事、
「退職所得控除とは?」
と直接つながるところです。
ただし、会社の退職金と企業型DCの一時金を両方受け取る場合には、受け取る時期や加入期間・勤続期間の重複によって、退職所得控除の計算が調整される場合があります。
そのため、
「一時金なら必ず一番得」
とは言い切れません。
年金形式で受け取る場合
一方、企業型DCを年金形式で受け取る場合は、税法上は公的年金等に係る雑所得として扱われ、公的年金等控除の対象になります。
つまり、

上の図のように、
一時金で受け取る → 退職所得として「退職所得控除」
年金形式で受け取る → 雑所得として「公的年金等控除」
という違いがあります。
年金形式の場合は、老齢基礎年金や老齢厚生年金など、ほかの公的年金等の収入との関係も考える必要があります。
ですから、
「一括でもらうか、年金でもらうか」
は、単純に受取額だけで決めるのではなく、税金やその後の生活設計も含めて考えることが大切です。
退職・転職したら企業型DCはどうなる?
ここも非常に重要です。
企業型DCは、
会社を辞めたら自動的に現金でもらえる
という制度ではありません。
転職先の企業型DCへ資産を移したり、条件を満たしてiDeCoへ移換したりするなど、退職後の状況に応じた手続きが必要になることがあります。
そのため、退職するときには、
「自分の企業型DCを今後どうするのか」
を必ず確認しておきたいところです。
会社から渡される退職関係の書類の中に、企業型DCに関する案内があれば、後回しにせず内容を確認することが大切です。
特に注意したいのが、退職後の手続き期限です。
企業型DCの加入者資格を失ったあと、原則として6か月以内に必要な移換手続きをしなかった場合、資産が国民年金基金連合会へ「自動移換」されることがあります。
自動移換されると、資産が運用されないほか、管理手数料がかかるなどのデメリットがあります。
自動移換中の期間は通算加入者等期間に含まれないため、場合によっては老齢給付金を受け取れる時期が遅くなることもあります。
そのため、企業型DCに加入している方は、退職時に早めに手続き方法を確認しておくことが大切です。
2026年には制度改正も行われています
企業型DCを調べる際には、古い情報にも注意が必要です。
2026年4月1日からは、企業型DCのマッチング拠出について、加入者掛金が事業主掛金を超えてはいけないという制限が撤廃されました。
さらに、2026年12月1日からは企業型DCの拠出限度額も見直されます。
国民年金第2号被保険者について、企業型DCの拠出限度額は原則として月額6.2万円に引き上げられ、DBなど他制度がある場合は、その掛金相当額を差し引く仕組みになります。
この記事を書いている2026年8月10日時点では、この6.2万円への引上げはまだ施行前です。
制度は変更されることがあるため、実際に手続きするときには最新情報を確認する必要があります。
私も退職して初めて詳しく調べました
会社員として働いていた頃は、企業型DCについて詳しく考えることはほとんどありませんでした。
毎年届く運用状況などを見ても、
「老後のお金が積み立てられている」
という程度に考えていた部分がありました。
しかし退職すると、
企業型DCはいくらになっているのか。
どのように受け取れるのか。
一時金と年金では何が違うのか。
会社の退職金と税金の関係はどうなるのか。
といったことを、自分自身で考えなければならなくなります。
そこで改めて感じたのは、
企業型DCは「会社に任せておけばいい制度」ではなく、自分の老後資金として自分自身で確認しておくべき制度だった
ということです。
まとめ|企業型DCは「受け取り方」まで考えておきたい
企業型DCは、会社が掛金を拠出し、加入者自身が運用して老後資金を準備する制度です。
大きなポイントは、
・会社が基本的に掛金を拠出する
・自分で運用商品を選ぶ
・運用結果によって将来の受取額が変わる
・運用益は運用中非課税
・一時金なら退職所得控除
・年金なら公的年金等控除
・退職や転職時には資産移換などの手続きが必要になる場合がある
というところです。
そして、退職が近づいてきたら、
「企業型DCはいくらあるのか」
だけではなく、
「いつ、どのような形で受け取るのか」
まで確認しておくことが大切です。
私自身も、退職をきっかけに企業型DCについて詳しく知ることになりました。
退職前に制度を少し理解しておけば、退職金や年金を含めた、その後のお金の計画も立てやすくなると思います。
※この記事は企業型DCの一般的な仕組みを紹介したものです。実際の加入条件、運用商品、受取方法、受給開始時期などは企業型年金規約等によって異なります。また税制・制度は改正される場合があります。実際の手続きについては勤務先、運営管理機関、厚生労働省、国税庁、税務署等でご確認ください。
出典・参考
厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」「2025年の制度改正」、国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」ほか。2026年8月10日確認。
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