介護の仕事を始めてしばらく経つと、少しずつ利用者さんのお顔やお名前を覚えられるようになり、
私の顔も覚えていただけるようになってきました。
もちろん、まだ分からないことはたくさんあります。
それでも毎日利用者さんと接しているうちに、私自身にも少しずつ変化がありました。
ある日、いつものように居室へバイタル測定に伺った時のことです。
利用者さんが私の顔を見るなり、笑顔でこう声を掛けてくださいました。
「仕事、慣れてきた?」
さらに、
「大変だけど頑張ってね。」
その言葉を聞いた瞬間、胸が熱くなりました。
介護をする立場の私が、逆に利用者さんから励ましていただいたのです。
介護職は利用者さんを支える仕事だと思っていました。
しかし実際には、私の方が利用者さんから元気や勇気をいただくことが何度もありました。
そして、もう一つ嬉しかったことがあります。
最初の頃は、
「ちょっと。」
「ねぇ。」
「お兄さん。」
そんなふうに呼ばれることが多かった私ですが、ある日、
「○○さん、あれお願い。」
と、自然に名前を呼んでいただけたのです。
その何気ない一言が、とても嬉しく感じました。
「ああ、私のことを覚えてくださったんだ。」
利用者さんとの距離が、少しずつ縮まっていることを実感した瞬間でした。
もちろん、すべてが順調だったわけではありません。
利用者さんの中には、男性職員による介助に抵抗を感じられる方もいらっしゃいました。
そのような時は、無理に介助をするのではなく、女性職員と交代するなど、利用者さんが安心して過ごせるように工夫していました。
介護は、介助をすることだけが仕事ではありません。
利用者さん一人ひとりの気持ちを尊重し、その方に安心して過ごしていただくことも、大切な仕事なのだと学びました。
介護の仕事は体力も必要ですし、覚えることもたくさんあります。
それでも、利用者さんから掛けていただく
「仕事、慣れてきた?」
「頑張ってね。」
そして、
「○○さん、お願い。」
その何気ない言葉が、私にとって大きな励みになりました。
60歳で新しい仕事に挑戦したからこそ出会えた、この温かい人とのつながり。
私はこの日、「介護職を選んで良かった。」と改めて感じました。
次回は、介護の現場で初めて「自分で考え、判断することの難しさ」を感じた出来事についてお話ししたいと思います。


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