介護の仕事を始めてしばらく経った頃。
最初は分からないことばかりだった毎日の仕事にも、少しずつ慣れてきました。
利用者さんのお名前を覚え、その方の性格や生活のリズムも少しずつ分かるようになってきました。
「少しは成長できたのかな。」
そんな気持ちを持つこともありました。
しかし、現場で働けば働くほど感じることがあります。
それは、介護という仕事には正解が一つではないということです。
同じ声かけでも、笑顔で応えてくださる日もあれば、気持ちが乗らない日もあります。
昨日できていたことが、今日は難しい時もあります。
体調。
気持ち。
その日の表情。
利用者さんは一人ひとり違います。
だからこそ、ただ作業を覚えるだけではなく、
「今、この方にはどんな関わり方が必要なのだろう。」
そう考えることが大切なのだと感じるようになりました。
介護を始める前の私は、食事のお手伝いや入浴のお手伝いなど、介護は決まったことを行う仕事だと思っていました。
しかし実際の現場は違いました。
例えば、入浴介助があります。
介護の仕事を始める前の私は、入浴介助とは安全にお風呂へ入っていただくためのお手伝いだと思っていました。
もちろん、それも大切な仕事です。
しかし実際に経験してみると、それだけではありませんでした。
昨日は立つことができた方が、今日はうまく立てないことがあります。
その日の体調や気分によって、できることが変わることを知りました。
だからこそ、利用者さんの表情や動き、いつもとの違いに気づくことが大切になります。
また、入浴の時間は利用者さんの身体の状態を確認できる大切な機会でもあります。
前回の入浴時には無かった傷や打撲のあと。
小さな身体の変化。
そうした些細なことにも気づき、看護師さんへ伝えることが利用者さんの安全につながるのだと学びました。
介護は、ただ決められた作業を行う仕事ではない。
一つひとつの関わりの中で、利用者さんを見守る仕事なのだと感じました。
利用者さんの小さな変化に気づくこと。
言葉にならない思いを感じ取ろうとすること。
安心して過ごしていただけるように関わること。
そこに介護の難しさ、そして奥深さがあるのだと思います。
もちろん、今でも迷うことはあります。
「この対応で良かったのかな。」
そう考える日もあります。
でも、その一つひとつの経験が学びになっています。
60歳から始めた介護の仕事。
覚えることは、まだまだたくさんあります。
若い頃のように、すぐに身につかないこともあります。
それでも焦らず、一歩ずつ。
利用者さん、そして一緒に働くスタッフの皆さんから学びながら、これからも成長していきたいと思います。
介護の学びに、終わりはない。
今は、そう感じています。
【次回予告】
第15話 60歳から始めた仕事で感じた自分の変化
介護の仕事を通して、少しずつ変わっていく自分自身。
仕事への向き合い方。
人との関わり方。
そして、これからの人生の考え方。
60歳からの挑戦は、新しい仕事を始めることだけではありませんでした。
それは、自分自身をもう一度見つめ直し、これからの生き方を考える時間にもなっていました。


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